松(まつ)考
《 一つ松 幾代か 経ぬる吹く風の音の清きは 年深みかも 》
万葉集 6ー1042 市原王
〈 私訳〉
一本の老松よ あなた は いったい どの位の歳月を見て来たのですか
吹く風の音が 清らかなのは 長い歳月を見て来たからなのでしょうね
千木の長 と呼ばれる〈松〉の木です
日本人の魂が宿る 神木 なのでしょう
年の始めには 多くの 神事が行われますが
そこでは 松 はいつも 神の使いとしての存在があります
年男 が やる重要な仕事として《 御松迎え 》がありました
山に入って松の木の枝を伐ってくることでした
歳神を迎える 門松 をつくるためでしたが 地方の家々では
門松を作る前にはこの松を 納屋や馬屋の入口や 台所に棚をつくり
神酒などを供えました
ところによっては 松 そのものを 神棚に 祀り 御松様 として
供え物を並べたようです 松 そのものが 歳神 だったのです
その松の姿は 《 三 階 松 》です
能舞台の 鏡板の松 も 〈三階松〉です
橋掛かりの白洲には
一ノ松、ニノ松、三ノ松 と三本の松が植わっています
能舞台に 描かれた 松の姿。
世阿弥の魂の中には 何が視えていたのでしょうか
三階松 を 社紋とする 神社が 各地にあります
その中でも 私が 印象に残る 神社は
高良下宮社
宮地嶽神社
今宮神社(京都紫野)
三階松紋 は九州皇統王朝の紋 だといわれています
故百嶋由一郎先生も 三階松 については
『 九州王朝でも 第7代孝霊、第8代孝元、第9代開化として
表現された 紀氏系の正統皇統九州王朝の大王の流れである 』
といわれています
この三代の天皇の御名には 〈日本根子彦〉という
同じ名前がつけられているのです
孝霊天皇=大日本根子彦太瓊尊(おおやまとねこひこふとにのみこと)
孝元天皇=大日本根子彦国牽尊(おおやまとねこひこくにくるのみこと)
開化天皇=稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひのみこと)
隠された 真実の歴史を 〈松〉は教えてくれています