ぬばたま
ひおうぎ (檜扇) の 花です
とても 清楚な品格がある 花です
名前の由来は 扇のような 葉にあります
花が落ち 実がなって 実の周りの 殻が剝げ落ちると
中から 真っ黒な 光沢に包まれた 種子 が 現れます
これが ぬばたま (射干玉) と 呼ばれているものです
万葉集には 枕詞としての 〈ぬばたま〉が使われています
枕詞とは 和歌において 特定の語の前に置いて語調を整えたり
ある 種の情緒を添える言葉のことをいいます
〈ぬばたま〉は 〈夜〉〈黒〉〈髪〉などに 掛かる 言葉です
なんと その数は 80首もあります
〈夜〉を詠った歌が 52首
〈黒髪〉を 詠った 歌が 15首 あります
《 ぬばたばの 黒髪変わり 白けても 痛き恋には 逢う時ありけり 》
万葉集 4ー0573 沙弥満誓(さみまんせい)
黒髪が白くなって(年をとって)も
せつない想いに出会うこともあるのですね
観世音寺の初代管長であった 沙弥満誓が
大伴旅人(おおとものたびと)が都に発った後に送った歌です
〈ぬばたま〉は 黒髪に掛かる 枕詞です
《 居明かして君をば待たむ ぬばたまの 我が黒髪に霜は降るとも 》
万葉集2ー88 磐姫皇后(いはのひめのおほきさき)
私はここで朝まで待っています、たとえ私の黒髪が白くなっても
仁徳天皇の妻 磐姫 の歌です 嫉妬に狂う女心 です
コワイ ですね。
《うつせみの 人目繁げくは ぬばたまの 夜の夢にを 継ぎて見えこそ》
万葉集 12ー 3108 読み人知らず
世間の人目が多いと嘆かれるのなら 夜毎 私の夢の中に 見えてくださいな
〈うつせみ〉 は 人に掛かる枕詞
ここでの 〈ぬばたま〉は 夜に掛かる 枕詞です
今年も 冬の 女性の髪の流行は
「黒髪」「ロング」「ストレート」だそうです
クリスマスは 《 ヌバタマガール 》が
街中の男達の視線を独り占め にしそうですね