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《 磯 良 の 海 》

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磯良の海に想いを寄せて

白秋詩碑



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白秋詩碑 (柳川市矢留本町)





北原 白秋 (1885~1842)


日本を代表する 詩人・歌人・童謡作家 として

多くの人に 愛された 白秋は

生涯 故郷 柳川 のことを忘れる事はありませんでした



『 帰去来 』


山門は 我が産土

雲謄る 南風のまほら

飛ばまし 今一度


筑紫よ かく呼ばへば

恋ほしよ 潮の落差

火照り沁む夕日の潟


盲ふるに 早やもこの眼

見ざらむ また葦かび

籠飼 や 水かげろう


帰らなむ いざ 鵲

かの空や櫨のたむろ

待つらむぞ 今一度


故郷やそのかの子ら

皆老いて遠きに

何ぞ寄る童ごころ







詩碑苑 の中に「帰去来」の解説文があります



山門(やまと)は自分の生まれ故郷である。

雲は湧き騰り南風(はえ)は常に吹き通う明るい土地柄である。

かって自分は飛行機で訪問したことがあったが、

ああもう一度、あの空を飛びたいものだ。


筑紫よ、国の名を呼び掛けると、もうそれだけで、

落差激しい潟海が思い出のなかに見えてくる。

夕日の反射を受けて光っているあの海が恋しくてならぬ。


だが、今の自分の両眼は早や盲いて、

二度とそれらをうつつに見ることはできないであろう。

あの水辺の葦(あし)の芽だちも、籠飼(ろうげ)も、

水かげろうも・・・


それにしても帰ろう。鵲(かささぎ)よ、

さあ、お前と一緒に帰ろう。

あの空、あの群れ立つ櫨(はぜ)の木が今一度、待っているであろうよ。


ああ、故郷。昔馴染みの誰彼もみな年老いてしまったし、

それに海山を遠くへだてて年ごろ疎遠になっているというのに、

どうしてこうも子供のように頑是なく、

故郷に心ひかれる自分なのであろう。


(解説-藪田義雄氏)


(註) 籠飼(魚などを捕るカゴ)



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北原白秋





白秋 52歳のころ 糖尿病 腎臓病により眼底出血のため視力を失います

「帰去来」は 薄明の中 故郷柳川への激しい憧憬を歌った詩です

母校 矢留小学校に隣接する詩碑は

同郷で 芥川賞作家の 長谷 健(1904~1957) が建設委員長をつとめました

長谷健と古くからの友人だった 作家 宮崎康平 は 夫人と共に

白秋詩碑に訪れた時のことを こんな風に綴っていました




からたちの若葉は バルサムのような香気を発散していた。

私は犬のように鼻をクンクン鳴らして あたりの葉先を

行きつ戻りつ しばらく嗅いでまわった。

雨上がりの空は底知れず澄んでいるらしく 雲雀が何羽もさえずっている。

詩碑の周囲に植えられた からたちの幹は

思ったよりがっしりと育っていた。

程よく剪定された枝の棘を気にしながら 私があちこちを触っていると

背後で妻が 碑面の朗読をはじめた。・・・(中略)・・・

「盲ふるに早やもこの眼、見ざるむまた葦かび、籠飼や水かげろう」

と、私も思わず 妻の声に和していた。

「盲ふるに早もこの眼」という言葉が

棘のようにグサリと喉に突き刺さる。

こらえようとしたが われ知らず、熱いものがこみ上げてきて、

どうする事もできなかった。





視えないものを 必死に 観ようとした

三人の作家 の 想いのむこうに

古代国 邪馬臺 が 横たわっています












by nonkei7332 | 2016-05-10 12:01 | 日記 | Comments(0)

by ヒサミツ